慰めてくれるイケメン-Log：Boys_003

2023年9月10日 3分48秒

紀国奈由大（Nayuta Kinokuni）

「キミが泣き止むまで一緒にいるよ」

イケメン-Data：奈由大（なゆた）

年齢：21

身長：171cm

職業：小説家志望

メモ：近所の白猫と友だちだが、猫には下僕だと思われている。

イケメンショートストーリー

冷たい夜の優しい雨宿り

会社で可愛がってくれていた先輩に裏切られた。

提出した企画にクライアントが憤慨する記述があって、その責任をすべて押しつけられてしまった。部長からの指示で先輩が作成したその企画書は、巡り巡って新人の不手際とされたのだ。

会社が営業を続けるためには仕方のないことなのかもしれない。それでも、その先輩の何のフォローもない態度にとても傷ついてしまった。いままであんなに優しくしてくれてたから、余計に悲しくなって――

錆びれた商店街のアーケードを抜けると雨が降っていて、ため息とともに涙がこぼれた。少し道をそれてシャッターの閉まった店先で雨宿りをさせてもらう。午後九時を過ぎて人通りもないので、はばからずポロポロと涙が流れていった。

バサッと音がして、青い傘が閉じる動きが視界の端を横切った。つい、傘の持ち主のほうへ顔を向けてしまう。すると、持ち主はこちらを見てペコリと頭を下げた。

確か、住んでいるアパートの大家の息子さんだ。何の用か分からないけれど、傘を持っているなら早く立ち去ってほしい。もっとここで泣いてから帰りたいから、ひとりにしてほしいんだけど？

ミニタオルで涙を拭って、やっと彼に声をかけた。

「……あの、何か用ですか？」

「キミが泣き止むまで一緒にいるよ」

「えっ？　あ、なんで？　……うっうっあぁ」

どうして彼がそうするのか分からなかったけれど、傷ついた心に寄り添ってもらえた気がして涙が止まらなくなった。雨の音に消される泣き声を彼は黙って聞いてくれていた。

夜の雨の優しいひととき――

人に傷つけられたり人に癒されたりして、私たちは生きていく。彼の優しさに触れて、私も人を癒す人になりたいと思った――

（文字数：約683文字）

--Fin.

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