哲学とは何か?

哲学とは、ギリシア語の「フィロソフィア(Philosophia)」に由来し、「知を愛する」という意味の言葉です。けれど、この説明だけを見ると、哲学は「知識を集めること」が目的の学問のように誤解されがちだと感じています。

私が思う哲学とは、「知識」を愛するというよりも、「知るという行為」を愛することではないかと思っています。たとえば、昆虫が好きな人は、進んで昆虫のことを知りたくなるでしょう。飛行機が好きなら飛行機を、音楽が好きなら音楽を、食べ物が好きなら食べ物を――。好きなものについて知りたいと思う気持ちは、とても自然なものですよね。

こうした営み =「知ることを愛する」ことが「哲学」であり、突き詰めて考えると、「生きる」ことそのものが、すでに哲学をしている状態なのだと思うのです。

そうすると、「生きる」とは何でしょうか。なぜ私たちは、昆虫や音楽や食べ物について「知りたい」と思うのでしょうか。それを辿っていくと、「自分はどう在りたいのか」という問いに行き着くのかもしれません。

知りたいと思ったことを吸収した自分という存在――「生きる」とは、「自分はどう在りたいのか」を探す旅である。イメージ的に、生きる(人生)そのものを「生き物」だと考えてみてください。

仏教では「諸行無常」といって、この世のすべては絶えず変化すると説かれていますが、それはまさに、成長し続ける生命の姿だと捉えられるのです。

だから私は、ときどき自分を「たまごっち(古いかな?調べてみてくださいw)」だと思ってみることをおすすめしています。今日は何に興味を持っているのかな、何を知りたがっているのかな、と自分を観察してみるのです。「お、私のたまごっちは昆虫を知りたいのか。よしよし、じゃあ餌(知識)をあげようw」――そんなふうに。

悩んだり苦しんだりすることがあっても、それはあなたの人生という「生き物」が、ちゃんと生きている証です。どうか、その存在を大事にしてください。

そして、「自分がどう在りたいか」は、誰かではなく、あなた自身が決めてほしいのです。その「たまごっち(生き物)」は、あなただけのものなのですから。なにかを完成させる目的ではなく、育てていく過程を楽しんでみてください。

この記事では、哲学を始めたい人におススメの本として、「自分はどう在りたいのか」や「生き方」を考えるきっかけになる本を三冊紹介します。一冊ずつ記事を分けていますが、読む順番は気にせず、気になった本から手に取ってみてください。上記で述べた私の考え方も一つの正解ではありません。「知ることを愛する」とは何か、哲学とは何かを深めていくベースになったらいいなと思っています。

哲学を始めたい人におススメの本(3冊)|一冊目『嫌われる勇気』

書籍の概要

まずは、『嫌われる勇気』(岸見一郎・古賀史健)。

この本は、「他人の期待に応える人生」から卒業するための哲学書です。
アドラー心理学をベースに、「哲人」と「青年」の対話形式で物語が進みながら、

  • 私たちはどこまで他人の反応に縛られているのか
  • 自分の人生を自分で決めるとは、どういうことなのか

といった問いを、とてもやさしい言葉で教えてくれます。

以下に、本書の内容とテーマを簡潔にまとめてみました。

『嫌われる勇気』の主なテーマは、「対人関係」「目的論」「課題の分離」などですが、ここでは特に印象的な二つを紹介します。

1.すべての悩みは対人関係の悩みである

これは、アドラー心理学の中心的な考え方です。
人が不安や劣等感を抱くのは、他者の評価や比較を気にするからであり、それに縛られることで自由に生きられなくなる、と本書では語られます。

たとえば、もし無人島で一人きりで一生を過ごすとしたら、自分が背が高いのか低いのかを、誰かと比べることはできません。そこには「体型のコンプレックス」も存在しないでしょう。

この例からわかるように、悩みの多くは、他者との比較や、他者からどう見られるかという視点から生まれます。少し極端な言い方ではありますが、そこに意識を向けすぎなければ、悩みは小さくなる――それがアドラーの考え方です。

2.課題の分離

「課題の分離」とは、他者の課題(責任の範囲)と、自分の課題を切り分けることで、生きやすくなるという教えです。

  • 他者が自分をどう思うか → 他者の課題
  • 自分がどう行動するか → 自分の課題

他者にどう思われるかをコントロールしようとすると、人は苦しくなってしまう、と本書では説かれています。

たとえば、会社で同僚に挨拶をしたのに、返事がなかったとします。そのときに、「何か悪いことをしてしまったのではないか」と悩み続ける必要はありません。挨拶をしたかどうかは自分の課題ですが、返事をするかどうかは相手の課題だからです。

『嫌われる勇気』のおススメポイント

このようなアドラー心理学の考え方を通して、本書のタイトルの核心である「自由とは、他者から嫌われることを受け入れる勇気」が語られていきます。

これは、誰かを敵に回せという意味ではありません。「好かれるために無理をする生き方をやめて、自分が本当に大切にしたいことや、好きなことにエネルギーを使おう」ということなのだと思います。

心理学の世界で言われることですが、どんな場所の人間関係であっても自分に対して、

  • 2割:好き
  • 7割:どちらでもない
  • 1割:どうしても合わない

という割合は、自然に生まれると言われています。

たとえば大谷翔平選手のような人でさえ、必ず一定数のアンチが存在します。どれだけ誠実に生きても、「嫌う人」はゼロにはならないのです。

アドラーが伝えているのは、
その1割のために、自分の人生を曲げなくていい
というメッセージ。

やりたいことができない、自分を制限してしまっている――
そんな人に、「生きる勇気」をそっと手渡してくれる一冊です。

哲学を始めたい人におススメの本

嫌われる勇気 (岸見一郎・古賀史健)_ダイヤモンド社

嫌われる勇気

このような方におススメ

・対人関係で悩んでいる方

・承認欲求から自由になりたい方

・もっと自分らしく生きたい方

bn-Kindle
bn-Amazon
–書籍情報

 出版社 : ダイヤモンド社
 発売日 : 2013/12/13
 単行本 : 296ページ
 ISBN-10 : 4478025819
 ISBN-13 : 978-4478025819

つづく → 哲学を始めたい人におススメの本(3冊)|二冊目・三冊目(記事未定)


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