樋堂 勝十朗(Shojuro Hido)

「もっと甘えていいんだぞ?」

イケメン-Data:勝十朗(しょうじゅうろう)

年齢:39歳

身長:190cm

職業:投資家(ボランティアで優勝賞品になったりする)

メモ:かなりの金持ち。でも、外食以外はお茶漬けしか食べない。

イケメンショートストーリー

優勝賞品がイケメンだった件

「生きるの下手くそ選手権」で優勝した――
優勝賞品としてイケメンが授与されたが、どうしたらいいのか分からない。

とりあえず、電車でアパートに帰ることにした。
車内で長身のイケメンがメチャクチャ目立っている。彼は電車に乗ったことがないのか、乗車口で頭をぶつけているし、賞品だからかタキシードを着ているしで好奇の的だった。

やっとアパートに帰りついたが、六畳一間にでっかいイケメンが居ることに現実感覚があやふやになった。拾った犬にミルクをあげる意識で、彼にミネラルウォーターを渡してベッドに腰かけさせる。

どうしていいのか混乱がピークになって、「イケメンが逃げないように縛らなくちゃ」と思った。押し入れをガサガサさがして縄跳びのヒモを見つける。そして、イケメンの手を取ってベッドのスチールパイプに括りつけようと奮闘した。

「なに、縛ろうとしてるんだよ?」

いきなりイケメンボイスが耳元に響いた。喋ったことにびっくりするのも束の間に、彼を縛っていたヒモをグルンと体に巻かれて引き寄せられる。そして、とても優しい圧力のキスで唇を塞がれた。

見た目が俺様系のイケメンなのに、そのキスはもどかしいほど柔らかくて甘くって――

「えっやぁ、やだ……」

いつの間にか上半身がすべて脱がされて、頭上で手首を縛られていた。あの甘いキスはほんの数秒だった気がするのに、マジックのような早業で淫らな姿になっている。

胸を晒されて隠すこともできなかったので、勢いをつけて寝返りをするように半分俯せの姿勢をとった。逃げたつもりなのに、彼に向けた背中にさっきのキスと同じ感触が降ってくる。

「やン……h、んぅ」

イケメンが肌を味わうように舌を絡めて唇をつけるので、そのたびに、背中が溶かされそうなほどゾクゾクした。頭がボーとして何も考えられなくなる。それでも、なんだかイケメンに悪くて声を枕にあてて抑えた。

クタリとした体をひっくり返されて、イケメンと目が合う。確か賞品カタログで、彼の名前は「勝十朗しょうじゅうろう」だったかな?

「勝十朗さん……」

「ショウでいいよ。もっと甘えていいんだぞ?」

……甘えるって、もう何年もしたことない。今までずっと独りぼっちで、頼れる人なんていなかった。ショウさんの自信あふれる態度に、本当のことを云ってみたくなる。

「私、一人で生きていくのが精いっぱいで……誰も助けられないし、頼れない……」

ショウさんは少し考えてから云った。

「じゃあ、俺が甘やかす。何してほしい?」

そう云ってくれたことが嬉しくて、涙がポロリとこぼれた。いま、彼の優しさに包まれたかった。

「……もっと、キス、してほしい……です」

「もちろん、姫、喜んで」

ショウさんは、言葉通りにさっきの甘いキスで私の願いを叶えてくれた――

(文字数:約1098文字)

--Fin.


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