栗川 瑠成(Runa Kurikawa)
「今までの経験は全部キミの一部になってるよ」
年齢:24
身長:176cm
職業:絵画教室の講師
メモ:チョコミントが歯医者さんの味っぽくて苦手。
イケメンショートストーリー
裸婦が恋した日
私はヌードモデルとして稼いだお金で実家の画材店を続けている。中学生のときから父のデッサンのモデルをしていたので、裸になることにためらいはなかった。
父の描く裸婦画は見惚れるほど美しく、モデルの恋心を映して生き生きとしていた。彼女たちの表情に妖艶さが混ざった画風は、芸術よりも官能作品といわれてしまうが、誰もがその魅力に抗うことはできなかった。
そんな父の作品で、一枚だけ面白みのない裸婦画がある。父が亡くなる前に私をモデルとして描いたものだ。
そのとき私は、まだ恋を知らなかった。いいえ、知りたいとも思わなかった。だから、何の魅力もない裸婦画になったのだと思う――
でも今、父が筆をとったら、どんな表情の裸婦を見ることができるだろう?
私は今、彼を求めて――
同い年の瑠成さんは絵画教室の講師をしていて、いつも私の小さな店で画材を買ってくれる。最近は少しずつ話すようになって、ヌードモデルの依頼も受けるようになっていた。
ある日、モデルの休憩中に画材店の経営が厳しいことや自分の特技が何もなく、店がつぶれたら行く先がないことなどの不安を口にしてしまった。なんとなく、キャンバスに向かう彼の筆遣いが父の姿と重なって気が緩んでしまったのかもしれない。
「今までの経験は全部キミの一部になっているよ」
「……え?」
その一言は、乾いた体に栄養が染みこむように広がって世界をクリアにした。いままでぼんやりと見ていた彼が急に彩られてキラキラと存在しはじめる。ドキンと心臓が掴まれたように苦しくなった――
「休憩終わりでいいかな? 続けていい?」
彼に促されて、また裸になってポーズをとった。彼の真剣な視線に恥ずかしさを覚える。眼鏡の奥の瞳に抱かれているような甘い疼き。抱かれるってこんな感じなのかな?
なんだろう、恥ずかしいのに、もっと見てほしい。彼に私だけを見てほしい――
終了時間になって帰り支度をしていたら、後ろから壁ドンのような体勢で声をかけられた。
「ねえ、誘ってるの?」
モデルの体には触れないことが画家とのルールだ。それを、彼はきちんと守っているのだけれど、逃げられないようにしてそんなことを云われて、体がボワンと熱くなった。
「ずっと好きだった。だから、急にあんな顔されて理性が飛びそうなんだ」
彼が私の髪に触れるギリギリのところまで顔を寄せてシャンプーの匂いを吸いこむ。そして、恐れるようにそっと首の付け根に唇をつけた。
「ダメなら云って? 止めるから」
「あっあの、私、はじめてなの……優しくしてくれたら、私も瑠成さんと……あnっ」
ぎゅっと後ろから抱きしめられる形で胸を揉みしだかれた。彼は私を愛おしむような愛撫でゆっくりと全身を昂らせて、甘い官能へと誘っていった――
(文字数:約1101文字)
--Fin.
大人の雑学 西洋画家事典-人柄がわかるエピソードで楽しく読める! (らちまゆみ)_ワニブックス
この本は、西洋絵画の歴史や画家たちの生涯を、彼らの人柄やエピソードに焦点を当てて分かりやすく解説しています。
ルネサンスから二十世紀の現代アートまで、巨匠たちの素顔や代表作にまつわる興味深い史実を楽しく紹介。「ダ・ヴィンチは締切を守らなかった」や「ルソーは南国美女にメロメロだった」など、画家たちの人生に触れることで、名画にも新たな魅力が加わり、違った味わいを楽しめます。苦手な西洋史もスルスルと学べて、西洋美術を身近に感じることができる一冊としておすすめです。
- 作者:らちまゆみ
- 出版社:ワニブックス
- 発売日:2022年01月
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